ロシアは今日も荒れ模様/米原万里/講談社文庫 ― 2006/01/03
ロシア語通訳者の著者だけが書ける「掟破りの」エピソードが面白いです。フィルターを通過していないロシア側為政者の肉声を捉えていますからね。もちろん職務上知り得たことをおおっぴらに書いてしまうのはマズいので、ギリギリまで隠してありますが(笑)。
小さい頃、何故か家ではロシア民謡が良く流れていました。父親の趣味だったと思います。大したことではないのですが、そんな経験があるだけでも、ロシアには、ホンの小さな親近感さえあります(んー、『ソビエト』は別なんですが)。
偉大なる田舎、EUへの嫉妬、そして完全主義とズボラさの同居。そんなカオスが、あの民謡の調べの底辺にあったのかと納得しています(そりゃ、大げさだっての)。
自転車日記 ― 2006/01/07
毎日ではありませんが、月に何回かは、週末や休日の前日に自転車通勤をやっています。はい、ヘタレです。正月で少しサボり気味だったので、寒さをおして、今日(6日)も自転車で帰ってきました。
走り初めて、やっぱり後悔。いやー、寒いのなんの(笑)。特に頬と足の甲。手首や腕、首筋は防寒を意識してそれなりに対処した格好をしましたが、その二カ所だけはどうにもなりません。あと鼻水(笑)。信号で止まるたびにズルズルやってましたから、立ち止まっている歩行者は「なんだ、コイツ」と思ったでしょうねえ。今回は110分で帰着。寒さと暗さで足の回転が上がらなかったので、こんなもんでしょう。
そうそう、帰宅後、数分でパラパラと雪が降ってきました。走行中に遭遇しなくて良かった。雪でも見ながら風呂にと思いましたが、湯船に漬かったとたんに冷え切っていた身体の溶け出す音で、風流ぶち壊し(笑)。やれやれ。
空の色紙/帚木蓬生/ ― 2006/01/10
表題作を含む中編3編が収録されています。ある殺人者の精神鑑定を行った医者が、実はその被疑者と同じ問題を抱えていた「空の色紙」。戦争末期、特別攻撃隊として出征した自分の兄と妻を巡る葛藤が、今でも苦しめる様子が描かれています。
他の二編も同様に、現役の医師ならではの内幕(論文発表の虚々実々や献体)がちりばめられていて、リアルさを増しています。
逆襲/東直己/光文社文庫 ― 2006/01/13
市会議員が娘の結婚を阻止するため探偵を雇う。この探偵がヨイショの達人。調査は進むが、ある時監禁されてしまう。さて、探偵は何に触れてしまったのか。表題作の「逆襲」を含め8編が収められています。
ハードボイルドとは銘打っていますが、それほどでもありませんでした。でも、上手い短編ばかりです。中でも「気楽な女」と「守護神」が良かったな。以前、この著者の長編を読んで「もういいや」と思ってしまったのですが、少し考え方を改めました。
慟哭/貫井徳郎/創元推理文庫 ― 2006/01/16
なぜか今まで読む気が起こらなかった貫井徳郎。反省しています。
行き詰まる誘拐捜査を指揮する捜査一課長と誘拐犯のそれぞれの視点から語られる物語は、終章で接点を見せます。でも、おそらく途中で「んー、こうかなあ」と気付くかもしれませんが。
それを除いても、面白く読めました。これから追いかけようと思います。
空山/帚木蓬生/講談社文庫 ― 2006/01/21
うーん、困った。正直言うと、読了するのに気合いが必要でした。話が山が無く平坦で、辛かったです。
帚木さんも、こういうものを書いてしまうのかと発見したのが収穫かな・・・。
裏と表/梁石日/幻冬社 ― 2006/01/24
金券ショップのウラのカラクリ。売りに来る人間、買い取る人間、回り回って金券が産み出す裏金。とても勉強になります(笑)。
しかし、この人の描く物語や世界は本当に面白いのだけど、ちょっと文章がヒドいんじゃないかと感じる。誰も指摘しないのは何故?
ベルカ、吠えないのか?/古川日出男/文藝春秋 ― 2006/01/29
戦時中、アリューシャン列島に取り残され、その後上陸した米軍管轄に置かれた日本軍籍の犬たち。彼らは島を離れ、それぞれの運命に従い世界中を彷徨する。もちろん犬自身や彼らの子孫が。彷徨は犬たちの現代史である。
いやー、参った。個性的な文章、今まで私が触れたことのない犬の世界、そして犬の歴史。読み終わった今でも少々興奮気味です。これは良くある犬と人間のチンケな話ではありません。いや、人間との関係ではなく、犬の正史と言って良いかも。
終章で話がグダグダになっている感は否めませんが、それでも強くオススメします。もう一回、読んでみようかな。
少女には向かない職業/桜庭一樹/東京創元社 ― 2006/01/31
全く知らなかった作家なんですが、タイトルが気になり手に取ったところ、これが大当たりでした。
風光明媚ではあるが閉ざされた地、明るいことで有名だけれども心の奥底には殺意を秘めている少女、そして校内では存在感のない少女。大人の世界に闘いを挑んで、彼女たちは勝利したのか?
「一年間に二人を殺した中学二年生の少女の闘いの記録」とのコピーに偽りなしです。表紙のデザインもGOOD。オススメです。
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