邂逅の森/熊谷達也/文芸春秋2005/07/21

東北の寒村に住んだマタギの半生を描いた作品です。幼い頃から親しみ、かつ恐れた山、そして山に生ける動物全てとの関わり合いの中での彼の成長(いや、生活と言うべきか)がリアルに表現されています。ある女性との恋愛が原因で若くして故郷から追い出され銅鉱山に働き場所を求める時期もありますが、その部分は、彼らマタギの置かれた環境と時代背景を浮き彫りにしていて印象的でした。また民俗学的な側面からも興味深い作品でした。人と山、山からの恵みとしての動物、そして人と人。目立つ存在でもない職業をこれほど清々しく屹立させる物語に久しぶりに触れたような気がします。

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