安楽病棟/帚木蓬生/新潮文庫2005/07/11

元TBS社員で、現在は精神科医の著者が描く痴呆病棟の現状。前半は、患者が入院する動機やきっかけをそれぞれの一人称で語り、後半はある看護婦が入院患者や病棟の日常を、こちらも一人称で語ります。患者達の過去から家族関係、病棟での毎日の事件、そして死。痴呆病棟の置かれた現状を内側から私たちに見せてくれます。しかし、それだけではなく、相次ぐ患者の死に異変を感じた語り手の看護婦が医師に対して静かな告発をする最終章は、クライマックスであり、なおかつきっちりとしたミステリーになっています。「ターミナルケア」や「終末期医療」などに関心のある人は読んでおいた方がいいです。

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