栄光なき凱旋(上・下)/真保裕一/小学館2006/06/04

 銀行に就職の決まった大学生のヘンリー、母からも見放され自立するしかないジロー、真珠湾攻撃に出会ってしまったハワイ在住のマット。心はアメリカ人でも日系人というだけで財産は没収され、強制収容所に押し込められる人々。三人は自らがアメリカ人であることを証明するかのように軍に志願する。彼らには「日本語」という武器があった。しかしジローは軍に入る直前、殺人事件を起こしてしまっていた。三人は戦中、そして戦後、どのような道を歩むのか。

 ハワイに攻撃を仕掛けた日本軍は日系人を捨てたことになるし、日系人部隊に過酷な命令を出し続けた米軍も彼らを捨て駒にした。どちらからも見放された日系人個人の断片を追うことは、そのまま彼らの歴史を追うことにもなります。まさに「大河ドラマ」のようでした。

 もちろん、内容は教科書的な物ではありません。戦闘シーンなどは、この著者独特の筆致で読ませます。オススメです。是非。

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