さらわれたい女/歌野晶午/講談社文庫2006/03/04

「夫の愛を確かめるために、私を誘拐してください」と美しい人妻は言った。金と美しさに目がくらんだ便利屋は引き受けてしまう。便利屋はその狂言誘拐に並行して、同じ夫婦から金を奪うことを目論み、成功するが、待ち受けていたのは人妻の死だった。

グロい場面や醜悪な人物が出てきますが、物語を終始流れている明るさは、便利屋の「暢気さ」が原因でしょう。それがうまい具合にプラスになっています。もちろん、二転三転する内容も面白いです。しかし、秀逸なのは、最後の便利屋の「心」でしょうね。威勢の良い啖呵を聞くようです。