症例A/多島斗志之/角川文庫2007/03/14

多重人格、境界例、ボーダー等々、ミステリに使われる精神関係の語句に飽きた方も、ぜひどうぞ。オススメ。★★★★

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_ miyukichin’mu*me*mo* - 2007年07月12日 00時15分02秒

 多島斗志之:著 『症例A』
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 2001年度「このミステリがすごい!」ランキングで
 国内部門9位となった作品です。

 お名前は以前から知っていたものの、
 読んだことがなかった多島さん。
 いやー、力作でした。
 もっと読んでみたい作家さんです。

 主人公(榊)が精神科医で、
 患者である「症例A」や同僚の臨床心理士が
 大きく鍵を握ることにもなるため、
 必然的に、精神病についての記述もとても多く、
 分裂病(現在は「統合失調症」と名称変更)、
 境界例、解離性同一性障害(多重人格)など、
 精神医学に門外漢な私が読んでも理解できる
 (ように思えてしまう)くらい、
 丁寧に詳しく書かれていました。

 それも、ただやみくもに説明を押し通すのではなく、
 榊医師に疑問をもたせながら進んでいくので、
 こちらにも無理なく入ってくるんです。
 そのへん、なかなかうまいなぁーと思いました。

 さらに、国立博物館の収蔵物の贋作疑惑も
 もう1本の筋として進行していきます。
 そちらの謎の解は途中からうっすらと見えてはくるものの、
 本筋とうまく絡んできて、落としどころも無理がなく、
 最後まで興味が途切れることなく読めました。
 最後はやっぱりホッとして、ボロボロ泣けてきました。。。
 
 それにしても、良心的にやっていたら
 とても経営なんて成り立たないという
 精神病院の経営実態には、やはりショックがありました。
 もちろんこれはフィクションなのだけど、
 でも、当たらずとも遠からず、なのだろうなぁと・・・。

 そうそう、読みかけ途中で寝た昨日の夜は
 榊医師の症例に対する迷い、悩みが乗り移ったのか(?)
 えらくうなされて、夜中に目覚めてしまいました^^;;
 皆さんも、もし読まれるなら、
 悪夢と寝汗にはご注意を!(笑)