臓器農場/帚木蓬生/新潮文庫2005/08/10

臓器移植で名を馳せようとする新設病院に就職した新人看護婦が、ふと耳にした「無脳症児」。大病院には外からは気付かれないような病棟があり、密かに探りを入れる医師が事故死し、看護婦が自殺する。  以前私は「人を人たらしめるのは、その人の記憶である」と書いたことがありました。しかし、この作品を読んで少し考えが変わりました。記憶の主は当人だけである必要はないのです。生きている自覚がないであろう人々を記憶している人々も「いのち」を照らす光源であることに、いまさら気付きました。  良い作家に出会いました。今後、徹底的に読んでいこうと思います。