汚名/多島斗志之/新潮社2006/02/14

ドイツ語を叔母に教えてもらっていた高校生のわたしは、貧しく陰鬱な叔母の雰囲気に馴染めなかったが、父との約束を破るわけにいかず、従姉妹と共に通っていた。しかし叔母が通り魔に襲われ負傷したのをきっかけに足が遠のき、しばらく後、叔母は病を得て亡くなってしまう。数十年後、作家として講演を行った地で、わたしは叔母の元クラスメートに出会い、女学生だった叔母が撮影されたフィルムを見た。そこに映っていた叔母は、ドイツ語を教えていた当時と違い、初々しく、華やかで、健康であった。叔母に何が起きたのか。

「わたし」が時代を遡って叔母の過去を探っていくと、そこに立ちはだかるのは戦争、特効警察、そして大きなスパイ事件でした。読み始めたときは単なる私小説かと思いましたが、途中からキッチリとしたミステリになっており、最後には相応の結末が用意されています。

また良い作家に巡り会いました。

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